ここ3日ぐらい読んでた新書『分析哲学講義』読了。



読んでて論理実証主義の話は自分の考える法学との関係で使えるかな、と思ったので考えをちょっとだけ整理してみる。

第1 論理実証主義の命題について

論理実証主義の命題は「直接的体験に対応する要素命題と、それらを論理的につなぎあわせた命題だけが、有意味な言語表現である」ということだという。
この場合、「有意味な言語表現」、つまり「(有意味な)命題」は二種類に限定される。
即ち、
①言語的・論理的規則のみに基づいて真偽判断ができる命題
②直接的体験に基づいて真偽判断ができる命題

そして、①の場合はその内部での言い換えの言語的・論理的な検証によって、②の場合は要素命題の経験による検証によって、それぞれの真偽は確認することができる、という。


第2 法学における規範について

法学における規範は「状況Xならば効果Rが生じる」という要件=効果の形式をとっている。
そして、一般に実定法学では(すなわち、法解釈の場面では)、この「状況X」を構成する要素が何であるかが問題となる。

ところで、この「状況Xを構成する要素が何であるか」という考察は、論理実証主義でみた「命題」の「要素命題」への還元にそっくりではないか。
つまり、法解釈とは複合命題としての法規範を要素命題へと単純化し、論理実証主義で言った②の命題と同様の手法によってその真偽性を確認しているものと考えることができるのではないか。


第3 プログラマーの目から見た操作の明確化

ここまでの操作について、オブジェクト指向的に明確化してみると、以下のようになるのではないか。
命題を表すクラス"Statement"を考える。
Statementには自らの真偽を判定するメソッド(boolean isTrue())および、ユーザーへの問いかけを行うメソッド(boolean question())が存在し、また、自らを構成する命題を保持するリスト(List<Statement> elements)を持つものと考える。
すると、isTrue()は、

public boolean isTrue() {
  boolean result;
  if(elements.size()>0){
    result = true;
    for(Statement element : elements) {
      result = result & element.isTrue();
    }
  } else {
    result = question();
  }
  return result;
}

と表現することができる。

これを法学で実践してみれば対話型の法律推論プログラムが作れるんじゃないかなー。

この実験の一番の成果として考えられるのは、厳密な要素命題への分析活動だろう。
そして、構造がデータベース化できるのであれば言語学とか言語哲学の研究資料としても有意義なものになるのではないかとも思った。

とりあえず院行ったらこういう研究がしたいですね。

さて、分析哲学講義読み終わったので、次は笹倉秀雄『法解釈講義』に挑戦してみよう。
その後は中山康雄の『規範とゲーム』かな。
読みたい本は山積しています。